地球人の中国語はどうなったのであろうか。当時、この中学には、台湾からの留学生もいて、そのご両親は、私とも顔見知りだった。学校のすぐ側に住んでいて、台湾に居たときから知っていた、このご一家の家に、地球人はよく遊びにいっていたし、学校でも子供達と会うことが多かった。
そこで、当然、北京語や台湾語も常用されていた。又、2年ぐらい上には、日本人の留学生も居た。しかし、東洋からの留学生で、英語教育をあまり受けずにこの学校に留学してきた学生は、一様にかなり苦戦していた。
特に私が心配した、歴史、社会、作文、宗教などでは、語彙に問題があり、他校に転校したり、再履修を強いられる学生も多かった。私はやはり、英語教育で幼稚園と小学校を終えさせてから、留学させたことは、かなり地球人のフランス語習得に、役立ったことと思う。
この多言語習得後に留学させたことには、もう一つの思いがけない効用があった。それは、「いじめ」の問題から、地球人が逃れられたことである。やはり、何処の国の学校でも、多かれ少なかれ集団生活をする以上、身分の上下や、いじめに近いことは起きてくる。この学校にも、眉をひそめる様な言動をする学生も多少だが居た。
彼たちは、大人しい子供を軽く威嚇したり、少し意地悪などをすることもあった。地球人も見るからに東洋人であり、目立つので、初めは標的になりそうになった。
しかし、私が学校のアリーナに顔を出すと、地球人はすぐに日本語で私に話しかけ、台湾からの友達とは北京語や台湾語で話し、寮生とは、自然に英語で話している姿を目撃した学生達の間で、いつしか、「あいつはなんだか、かなりたくさんの言葉が話せて、スゴイらしいよ!!」という、評判が立ち始め、そのコワモテ学生達にも、一目置かれるようになっていった。
コワモテ学生に多少意地悪をされかけていた学生の幾人かは、自然と地球人のまわりに集まり、助けを求めるようになった。自分の事では、喧嘩を好まぬ地球人も、ときどきコワモテ学生に、あまりイジメをしないよう注意したり、よく話し合いをもったりするようになった。
すると、そうしたコワモテ学生達も、色々な悩みを抱えていて、その相談に乗っているうちに、すっかり彼達とも話が通じ、仲良しになった。地球人はこうして、どちらのグループにも属さず、自然と融和剤のような役割を果たすようになり、多言語習得経験から生まれた、一目置かれる存在感が、思わぬところで平和利用されていくようになった。
やはり、何かひとつでも、自信を持たせてから海外留学に送りだすことは、知らず知らずのうちに、あまり他人に惑わされることなく、自分を見失わぬようになるばかりか、他人の痛みにまで思いを馳せる心の余裕が生まれてくることを知り、私はとても嬉しく思った。
とにかく、欧米、カナダの子供達は、自分で働きながら勉強するような独立心の強い子が多く、地球人もそんな良いところはすぐ取り入れ、自分の生活のペースをキチンと守る努力もし、どんな学生にも真っ直ぐな心で向かおうと心がけていた。
私は、これまでの、多言語習得と厳しい独立訓練の経験や失敗が確実に役に立ち、心身ともに頼もしく成長し続けている地球人の、楽しそうな留学生活を知り、心からホッとした。



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